理事長所信

2026年度
公益社団法人 鎌倉青年会議所
理事長所信

第62代理事長 郷原 啓介

2026年度テーマ

「地産知承」

2026年度 スローガン

「地域で承継し繋ぐ未来」

はじめに

我々鎌倉青年会議所は60年以上の歴史の中でまちを想い、まちの課題を若き青年経済人の目線で運動を行ってまいりました。自然あふれる街並みと歴史ある観光地としての賑わうまちとして、世界から認知されている鎌倉は多くの観光客、移住者、そして古くからこのまちを誇りに思い住み暮らす様々な方に愛されてきました。市内外から多くの人々を惹きつけ魅了してきた鎌倉ですが、訪れる人々に対して観光的なイメージが強いまちとは違い、地域住民にとっては、大切な守るべき居場所です。鎌倉の各地で観光名所となっている紫陽花も、もとは崖崩れを防ぎ暮らしを守る工夫から生まれました。また、鎌倉野菜のように狭い土地の中で品種が重ならないように差別化した結果、少量多品種の七色畑と呼ばれ、人気の地場産業に変化を遂げた例もあります。このように暮らしの中での地域課題を解決し、変化をしてくことで地域の新たな価値を生み、本当の「鎌倉らしさ」となってきました。「鎌倉らしさ」とは、観光地としてのブランドだけではなく、暮らしの中で受け継がれてきた人と人との繋がり、自然と共に生きる知恵、地域の課題を自らの力で解決し、新たなまちの魅力へと転じてきた営みそのものです。その積み重ねこそが、私たちが誇りとして守り伝えていくべき鎌倉の姿だと考えます。
しかし、近年では市外の資本による観光関連の施設や飲食・宿泊業の展開が進んでおり、新たな雇用も生まれる一方で、地場産業や地域に根ざした職業は相対的に存在感を失いつつあります。その結果、地元出身の若者が働き先を求めて市外へ流出する傾向が強まり、子育て世代の定着が難しく、後継者不足が課題となっています。こうした背景もあり、地域資源が十分に活用しきれていない現状があります。私が考える地域資源とは、豊かな自然や歴史ある文化などの環境資源、そこで住み暮らし、働く人々からなる人的資源、そこから知恵と努力によって生み出される産業資源、さらには教育や福祉、防災で培った社会資源があります。この地域資源が地元で循環できないと「鎌倉らしさ」が損なわれてしまい、地域住民に大切に守られてきた居場所がなくなってしまいます。その背景には、市民一人ひとりが自分のまちを「自分ごと化」できず、残すべき地域資源を理解できていないことが挙げられます。
だからこそ、鎌倉に暮らす市民一人ひとりが、まちの未来を自分ごと化し、「鎌倉らしさ」を形成している地域資源を考え、残すべきものを深く知り、新たな資源を模索しながら地域で承継し、未来へと繋いでいくことが必要です。

変わりゆくまちの中で承継していくまちづくり

日々時代と共にまちの風景や暮らし方は変化しますが、鎌倉では長い歴史の中で培われてきた数多くの魅力があります。その魅力を守り、活かし鎌倉らしさを損なわないためには地域資源を深く理解し活用できる環境を整え、次世代へ繋ぐことが必要です。その一環として、まず地域で生まれた資源を知り、鎌倉らしさを広げる事業を開催します。
次に当会議所の設立5周年を記念して当時の御家元であられた鵬雲斎千玄室大宗匠様と共に歩み始め、今日まで続く鎌倉らしい事業である慈善茶会を開催いたします。この長きにわたる歩みはひとえに毎年お献茶式を行ってくださいます茶道裏千家千宗室御家元様をはじめとする御宗家の皆様、毎年素晴らしい会場をお貸しくださり多大なるご協力をいただいております鎌倉大仏殿高徳院佐藤孝雄御住職様、本事業を開催するに当たりご協力をいただいております地域の協働団体の皆様、当日会場にお越しくださります皆様、そして関係する全ての方々のお陰であり、当会議所を代表して厚く御礼申し上げます。今回で58回目となる本事業では、人と人とが向き合いまちの未来を共に想い描くそんな場でありたいと考えています。さらには、長きにわたりこの事業を支えてくださる協働団体の皆様とも、今以上に互いを知り未来を共に語り合う場を設けたいと考えています。
最後に、私たちは鎌倉の地域資源を大切にしながら、子どもから高齢者まで多世代が共に学び、支え合うことのできるまちの環境と市民を繋げ未来に承継していく事業を行います。また、地域で生まれた資源を深く理解し活用する循環の輪を広げることで、鎌倉らしいまちを次世代に引き継ぎ、市民一人ひとりが自分ごと化して地域に関わり、誇りを持てるまちを築いていきます。こうした取り組みを通じて、当会議所は、地域の人々と共に鎌倉らしさを守り、未来へ繋ぐ運動を行ってまいります。

人を育み魅力を発見し新たな会員の輪を広げる

当会議所が今まで運動を続けてこられたのは、鎌倉の自然や文化と同じく、この地域に根ざし、志を受け継いできた人々に支えられてきたからです。そして、これからのまちづくりに必要なのは、地域で生まれた資源を理解し、共に考えながら未来へと承継することが出来る新たな仲間です。そのような会員を迎え入れることが、当会議所の運動を力強く継続させ、地域に循環を生み出す原動力となります。
入会した仲間には、不安や課題に寄り添いながら成長を支援し、世代や経験を超えた絆を深めることで、会員の魅力をさらに育んでいきます。また、先輩諸氏から受け継がれてきた知見や運動の歴史は、まさに「知承」の実例であり、現役メンバーにとって大きな学びの源泉です。その想いを共有する場を提供し、地域の未来へ繋げることで、会員拡大が単なる人数の増加ではなく、地産知承の輪を広げることとなります。さらに、会員一人ひとりが持つ個性や情熱は、新たな地域資源を生み出す力です。会員の魅力を最大限に発揮し、会員拡大に繋がる事業を開催することで、この仲間と一緒に鎌倉の未来を創りたいと思うきっかけとなり新たな仲間との出会いへと繋がっていきます。
最後に地域資源を影響力のある場で発信し地場産業を盛り上げ、新たな仲間となりうる市民との関わりの場を創出するために、共催関係にある大船夜市実行委員会と共にまちに対して最大限のインパクトを与える事業を開催します。加えて、理事経験のない会員が主体的に事業を担う機会を設けることで、地域に根ざした学びを実践し、次世代の人材として歩みを進められるよう支援します。
こうして地産知承の精神を共に担う仲間を集め、育て、繋ぐことこそが、当会議所の魅力を高め、地域に新たな循環をもたらします。まちを想い、仲間を想い、地域資源を未来へと継ぐことで、当会議所は地域にとっても、会員にとっても欠かせない存在であり続けます。

循環していく地域の輪を結ぶ渉外交流

鎌倉には教育、福祉、防災などの分野で活動する多様な団体が存在し、それぞれが地域の課題に向き合いながら積み重ねてきた知見は、まさに地域に根ざした「知」としての財産です。その活動を尊重し、交流を深めることは、地域に新たな学びをもたらし、未来へと繋ぐ大きな力となります。まずは地域で活躍する団体や企業との交流の場を設け、当会議所だけでは気づくことのできない資源を再発見し、互いの強みを活かし合える関係性を築きます。そして、こうした取り組みにより地域資源の循環を促す基盤を整え、共に鎌倉らしさを承継していける地域団体との連携を深める事業を開催し、様々な団体が一致団結することで未来に向けた地域の輪を結びます。
さらに、日本青年会議所本会をはじめ、関東地区協議会や神奈川ブロック協議会によって多彩な大会や事業が日本各地で開催されます。これらは会員が必要な学びを得る場であり、他地域の仲間との交流を通じて新たな視点や経験を獲得する絶好の機会です。当会議所としても、会員が積極的に参加できるよう支援し、得られた学びを鎌倉の地に還元することで、地域に根ざした運動をさらに発展させてまいります。外から取り入れた価値と地域資源を融合させることにより、鎌倉にしかない魅力を創出し、未来へと承け継ぐ力を高めます。
多様な団体や企業、市民との繋がりは単なる関係強化にとどまらず、互いの知見を承継し合い、新たな資源を発見するきっかけとなります。また、顔の見える関係性から生まれる日常的な連携により、いざという時に支え合える関係を構築してまいります。

信頼のおける組織運営と運動の発信

青年会議所は単年度制という仕組みを持つからこそ、その時代の社会課題に対して順応性を発揮し、未来へと繋がる新たな挑戦を生み出すことができます。会員は今、何を残すべきかを考え、次の世代へ承継する責任を担っています。その始まりとして日頃より多大なるご支援を賜っている関係諸団体や先輩諸氏に対し、受け継いできた想いと本年度の意気込み、そして感謝を示す機会を設け、当会議所の本年の方向性を発信させていただきます。また、事業を進める中で築き上げてきた新体制を途切れることなく次年度へと受け継ぎ円滑な移行を図るべく、次の時代を担う体制を祝い、未来への志を共有する事業を実施いたします。本事業により、組織としての継続性を保ち、会員一人ひとりが未来を見据えて力強く歩みを進める体制を整えます。締めくくりとして、当会議所を支えてこられた卒業生の皆様に敬意を表し、その功績を称えるとともに、地域のリーダーとして新たな門出を祝う事業を実施いたします。
次に、1年間を通して総会や理事会などの組織運営を適切に行い、強い組織の土台を構築し運動を展開していきます。そして、当会議所の運動を地域社会に広く認知していただくためには、対外的な発信力の強化が不可欠です。発信の手段は単なる情報の伝達ではなく、地域の人々に共感され、共に未来を描くための広報でなければなりません。 そのために、SNSや動画配信といった新しいメディアの可能性を活かしつつ、昔から鎌倉のまちと共に歩んできた新聞やローカル紙、ケーブルテレビといった伝統的なメディアとの連携を大切にしてまいります。こうした地域に根差した媒体は、長年にわたり市民生活に寄り添い、地域の記憶を承継してきた存在です。だからこそ、そこに私たちの運動をしっかりと載せていくことが理念を体現する発信となります。そして、外の価値観や知識を柔軟に吸収し、鎌倉に還元することで、多様な力をまちに集めることができます。そのためには、当会議所会員が広域の運動に参加することが必要であり、内側と外側の現状を把握し、支援することによりスムーズで円滑な運営をしていきます。

おわりに

鎌倉青年会議所は61年にわたり、このまちの課題に向き合い、時代とともにまちづくりを重ねてきました。その歩みは先輩諸氏の情熱と行動の結晶です。だからこそ、歴史を盾にするのではなく、変化に即して組織と運動のあり方を更新し続けます。私自身、地域に根を張る農家として、このまちで暮らしてきました。かつては「承継する」とは、やり方を変えずに貫き通すことだと考えていました。しかし、環境や時代が大きく変化する中で実感したのは、変化に合わせて形を変えることこそが守ることに繋がり、それがいつの時代でも求められる価値となり、やがてそのまちらしさの一部となっていくということです。多様な要素が複雑に絡み合う中で、人々に愛されるまちであり続けるためには、このまちに暮らす一人ひとりが心からまちに愛着を持ち、自らの暮らしや営みをまちの未来に繋がるように「自分ごと化」することが欠かせません。
環境を生かすのは人であり、人を育てるのもまた環境です。日々このまちで暮らし、働き、生活している私たちだからこそ、本当に必要とされるものを深く理解し、変化の先に見える未来をしっかりと見据えることができます。そして、その変化の先にこそ、これからの新しい「鎌倉らしさ」が芽生えていくのだと信じています。
野菜を大地から引き抜くとき、根の広がりを意識せずに小手先で引こうとすると、地表に出ている部分だけでちぎれてしまうことがあります。まちづくりも同じで、表面的な取り組みではなく、その課題の根っこまでしっかりと理解し、全身全霊で地域と向き合い、一つひとつに丁寧に取り組むことが必要です。一時的な流行や外からの影響に左右されるのではなく、地域の人々と地域資源が互いに循環し、調和しながら共生していく。私たち鎌倉青年会議所は地域の力を承継し、世代を超えて未来へと繋いでいくことを目指していきます。
1年間どうぞよろしくお願いいたします。